認知症外来について

認知症外来と名付けていますが、実際の診療時間は差別化せず、一般の外来診療の時間の中で「認知症外来」を行っています。その理由は、認知症もほかの病気も「病気」であることに何も違いがないからです。ただし、認知症の診断はとても時間がかかります。他の疾患でも、熱心な質問を投げかけられるともちろん時間がかかりますが、認知症外来の場合はほぼ「常に」平均診療時間が数倍長くなります。
そのため、一般的には、認知症の相談に来られる方々のために、➀ほかの患者様に気兼ねせずに診療を受けられる、➁ロビーでほかの人たちに迷惑になる行為を見せないで済む、➂時間や曜日を設定したほうが医療側も効率よく進められる、などの事情を配慮して、「認知症外来日」を差別化して設けています。
しかし、「認知症外来」を特定化するデメリットももちろんあります。➊受診するときに、認知症・認知症の家族だと周囲から思われるのではないか、➋ロビーで待っている時も知り合いに会った瞬間に認知症と思われるのではないか、➌ご近所でも、受診先でも、常に認知症であること、認知症家族であることのストレスから解放されない、などです。
開業当初、小樽市民の間では脳神経外科というものの敷居は高く、紹介状を持って行かないと診てもらえない、脳の病院だから頭の変な人が行く所、という認識の人たちが多くいらっしゃいました。それが「困ったときの島田脳外科」と言われるまでになれたのは職員総意の努力の結果ですが、「どこにかかったらいいのかわからないから先生に診てもらいに来た」とおっしゃる患者様も来られるようになった今、当院の玄関をくぐる人は、生活習慣病を持っている人、脳卒中の後遺症を持っている人、腰痛などの痛みで困っている人、ちょっとうつっぽいけど精神科には行かずに済ませたい人、認知症の人、あるいはこれらの病気についての相談がある人、などいろいろな人たちがロビーで顔見知りとなり、「お宅はどうして来ているの?」と気安く声を掛け合い、励まし励まされ、日々の闘病のつらさから一時的にでも解放される、そんなアットホームなところでいたいと思います。
都会で働く人たちのためには、休み時間に診療してくれる特化したクリニックも用意されていますが、それは特別なものであり、本来の医療の姿は、「病気を診る」のではなく「病気の人を診る」ものであり、話に耳を傾けるものであり、相手を気遣うものだと思います。世の中に「認知症カフェ」なるものがあるように、当院のロビーも、健康や病気について関心を持ち、互いを理解しあい、相手を気遣うところでありたいと思います。
認知症の人の診察は特に時間がかかります、どうしてそうなるのかはロビーでお会いしたらわかります。「大変だねえ」と思わず漏らしてしまうと思います。そうした認知症に対する理解を広めるためにも、どうか忍耐強く、待ってあげてください。同じく病気で相談に来ている患者様の一人なのです。 (認知症サポート医)