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13. ちょっとDrには酷な質問だけど、「介護食」ってわかる?介護職じゃないわよ。

 おーっと、とろみ食について質問してくるかと思ってたら、介護食ですか?大上段に振りかざしてきましたね。受けて立ちましょう、介護食。

 介護食とは、介護されている人に残っている摂食・嚥下機能をフルに活用しておいしく食べていただけるように工夫した食事のこと、当たり前ですよね。最近はドラッグストアにこれでもかというくらい並んでいますが、介護されている人のレベルがさまざまなら介護食のレベルもさまざまです。

1)分類もいろいろ 

 日本摂食嚥下リハビリテーション学会調整食分類2013、嚥下食ピラミッド、ユニバーサルデザインフード(日本介護食品協議会)、スマイルケア食

 現在でもつかわれている介護食の分類表は主にこの4つです、もちろん本家は学会分類2013ですが、これは摂食嚥下訓練士のためのもので一般介護者にはなじみにくいと言う事で他の3者が使われているという具合です。

 「スマイルケア食というのは、農林水産省が2014年11月に作成して、国内で標準化しようとスタートした分類表示です。次のように説明されています。

農林水産省では、介護食品の市場拡大を通じて、食品産業、ひいては農林水産業の活性化を図るとともに、国民の健康寿命の延伸に資するべく、これまで介護食品と呼ばれてきた食品の範囲を整理し、「スマイルケア食」として新しい枠組みを整備しました。

「スマイルケア食」は、健康維持上栄養補給が必要な人向けの食品に「青」マーク、噛むことが難しい人向けの食品に「黄」マーク、飲み込むことが難しい人向けの食品に「赤」マークを表示し、それぞれの方の状態に応じた「新しい介護食品」の選択に寄与するものです。

以下の図を参考にしてください。意外とすっきりまとまっていて好感度大です。

 皆さんは、「きざみ食」「軟菜食(ソフト食)」「ミキサー食」「嚥下食」「流動食」という言葉がなじみ深いでしょう?

噛む力(咀嚼機能)や、飲み込む力(嚥下機能)に合わせて適切な食事形態を選ぶことで、誤嚥(食べ物が気管に入ってしまうこと)や食事中にむせてしまうことなどを防いでいるんですね。

ここでは、「きざみ食」「軟菜食(ソフト食)」「ミキサー食」「嚥下食」「流動食」について説明します。

1)きざみ食

 メニューは通常食と同じですが、細かく刻んである食事を「きざみ食」と言います。

きざみ食は、飲み込む力はあるが噛む力が弱くなった方に適した食事です。

刻む大きさは施設や病院、食べる方の状況によって1~2cm角のものもあれば、みじん切りほどに細かいものまでさまざまです。

ただ、細かく刻んであるために食べ物を口の中でまとめにくく、ときには誤嚥(食べ物が気管に入ってしまうこと)につながる可能性も指摘されています。

応用編としては、開口障害があるときや入れ歯のあわない人にもいいかもしれません。ただし、唾液の少ない人は口の中でまとめにくいので誤嚥しやすく、入れ歯の人も入れ歯と歯茎の隙間に入り込んで食べづらいかもしれません。

きざみ食で気をつけたいポイントは、水溶き片栗粉でトロミをつけて食べ物の粒をまとまりやすくすることです。

2)ソフト食

 食べ物を自力で噛み砕くことが難しい方のために、食べ物をやわらかく煮込む、一度ミキサーにかけてから固めるなどをして工夫した食事を「ソフト食」と呼びます。

やわらかさのレベルは、歯ぐきでつぶせる程度から、ほぼ噛む必要がないものまでさまざまです。噛む力、飲み込む力が低下した方に適しています。また、胃腸が弱い人、箸がうまく使えない人にとっても食べやすい食事と言えます。

食材を煮込む・茹でるなどでやわらかくしたり、ミキサーにかけ再度固めて元の形状に仕立てたものがあり、前者を軟菜食、後者をソフト食と呼ぶ場合もあります。

どちらもペースト状ではなく、食べ物の原型が残っている(または形成されている)ことが特徴です。

ソフト食で気をつけたいポイントをいくつか、

野菜は、口内に残りがちな皮を剥いてあげることと、繊維と直角に切ること。

肉類は適度な脂身がある方が食べやすく、脂がほどよく溶けて喉越しも良好になります。赤身などの堅い肉は筋を切ったり叩くことでやわらかくなります。挽肉は口内でまとまりづらくならないよう卵などのツナギを使いましょう。

魚は加熱するとくずれがちなので多脂質のものがベターですが、骨はよく注意して取るようにしましょう。調理法も、蒸す、すりつぶしてつみれにする、煮込むなどさまざまですので、食べる方の状況に合った工夫をしましょう。

ソフト食を作ろうと思うと普通食よりも時間がかかりますが、喜んで食べてくれる姿を想像しながら創意工夫をするので、作る喜びや楽しみが膨らんで空気も明るくなります。ぜひお試しを。

3)ミキサー食

 ミキサーにかけて食べ物をポタージュ状にしたものを「ミキサー食」と言います。ソフト食も摂取困難なほどに噛む力が低下していて、飲み込むことが難しい人に適している食事です。

 ミキサー食の気をつけるべきポイントをいくつか、

 食欲減退を極力防ぐため一品ずつミキサーにしましょう。ミキサー食は食事をすべてミキサーにかけるので、見た目が美味しそうでなく、食欲をそそりません。食欲が減退すると、必要な栄養素も摂れなくなることが考えられます。低栄養を防ぐためにも、一品一品ミキサーにかけて、元のメニューを伝えるようにしましょう。

 必要な栄養素を摂取するためには量が多くなることを念頭においてください。ミキサー食は通常食に出汁などの水分を加えてドロドロ状にしたものですから、必要な栄養素を摂取するには通常食よりも多い量が必要になります。

 水分過多には誤嚥を防ぐためにトロミづけが有効ですが、つけ過ぎには注意しましょう。水分が多いと無意識に喉まで入ってしまい誤嚥につながる危険があり、トロミをつけ過ぎれば喉に張り付き飲み込みにくくなるので、ちょうどよい粘度に仕上げることが重要。目安はポタージュ状です。

4)嚥下食

 やわらかく調理したものをミキサー等でペースト状もしくはゼリー状にした食事で、飲み込む機能(嚥下機能)の低下した人に適しています。

5)流動食

 液状のおかずや重湯(粥の上澄みの液)。手術後や高熱で胃が弱くなった人に向いていますが、エネルギーや栄養素が少ないので注意が必要です。

良い「とろみ」をつけるために ~基本編~

小型泡だて器でしっかりかき混ぜることが、よい「とろみ」をつけるポイント。

「とろみ剤」の活用方法には、いろいろな応用がありますが、まずは基本的な使い方をお話します。

(1)飲み物の入ったコップに、「とろみ剤」を入れる

(2)小型泡だて器(※100円ショップに売っています)で30秒間かき混ぜる

(3)「とろみ」がついたことを確認する

これで出来上がりです。

非常に簡単ですが、ポイントは(2)の「30秒間しっかりかき混ぜる」こと。ここを省略してしまうと残念な「とろみ」になってしまいます。

 もう1点、気をつけなければならないことがあります。「飲み物の種類によって、とろみ剤が水分を吸収する時間は異なる」ということです。例えば、お茶や水などの混ざり物の少ない飲み物であれば、吸収も早いのですが、食塩や出汁などを含む「みそ汁」や「吸い物」「スープ」、糖分を含む「ジュース」、脂肪やたんぱく質を含む「牛乳」などでは、吸収は遅くなります。

飲み物や「とろみ剤」の種類によっては、10分くらい経ってから、適当な硬さになるものもあります。ですので、混ぜた直後に「変わらないなぁ…」と、「とろみ剤」を追加しないようにして下さい。後で硬くなりすぎてしまう可能性が高いです。

とろみをつけよう ~応用編Ⅰ~

飲み物を提供するたびに30秒以上、泡だて器でかき混ぜるのはかなりたいへんな作業です。楽にかき混ぜる方法を2つお教えします。

<とろみ剤に飲み物を注ぐ>

(1)「とろみ剤」をコップに入れる

(2)飲み物を注ぐ

(3)泡だて器でかき混ぜる

(4)「とろみ」がついたことを確認する

ポイントは、「とろみ剤」を先にコップに入れておくこと。つまり、「とろみ剤」に飲み物を注ぐわけです。

<ペットボトルを利用する>

(1)ペットボトルに半分くらい飲み物を入れる

(2)「とろみ剤」を入れる

(3)強くシェイクする

(4)「とろみ」がついたことを確認する

この方法も楽です。ただし、ペットボトルの口が小さく、「とろみ剤」がこぼれやすいこと、飲み物があわ立ちやすいなどのデメリットもあります。先ほどと同じように、「とろみ剤を先にペットボトルに入れてから飲み物を半分くらい入れれば、さらに楽?です。

とろみをつけよう ~応用編Ⅱ~

ジュースや牛乳、みそ汁など、混ざり物の多い飲み物は「とろみ」がつくのが遅いのは先述の通り。このような飲み物に、「とろみ」をつけるには、「2度混ぜ法」が便利です。

<2度混ぜ法>

(1)コップに飲み物と「とろみ剤」を入れる

(2)30秒間、かき混ぜる

(3)待つ(飲み物と「とろみ剤」の種類によりますが、10~15分待つ必要があることも…)

(4)「とろみ」がついたら再度かき混ぜる

(5)「とろみ」がしっかりついていることを確認する

正直、10分待っている間に温かい飲み物は冷めてしまいますが、この点は気にしなくて大丈夫。高齢者は私たちが思っているような適温よりも人肌に近い温度の食べ物を好む傾向が強いからです。10分待ったほうが適温になっている可能性もあります。

「従来、「とろみ」の強さについては、「ポタージュスープ状」「はちみつ状」などあいまいな表現がとられていましたが、2013年になってやっと「日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2013」で3段階の分類が示されました。

飲み込む動作をしたかどうかの判断は素人目でもできます。男性ならのど仏が動きます。女性ものどをよく見ていると、のどが一瞬、上がるのがわかります。しかし、飲み込んだ動作をしていても、誤嚥している可能性はあります。さらに怖いことに、誤嚥をしていてもむせ込まない人もいます。高齢者の場合、喉から肺へのルートと胃へのルートをコントロールしている咽頭蓋(いんとうがい)の機能が低下している人もいます。濃いとろみは誤嚥を防ぐため、ゆっくり食道を通過しますが、それでも間に合わず、肺に飲み物がダラダラと入り続ける人もいます。そして、誤嚥に気付かないまま肺炎を発症させてしまう事例も少なくありません。

「とろみ」をつける行為は、在宅・施設を問わず、日常的に行われている、何気ない行為です。ただし、利用者に適した「とろみ」でなければ、時にはその健康を損なう要因になります。どの程度の「とろみ」が最も適当なのかについては、やはり嚥下造影法を実施している病院か、言語聴覚士に相談して決めるべきでしょう。

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