16. ちょっとちょっと、高齢者が転びやすいのは床のせいなの?

 いえいえ、そういうつもりはありません。高齢者特有の転びやすさについては、いろいろなところで紹介されていると思います。でも、その要因を、視点を変えて床に目を向けるという柔軟な見方も必要だ、という一例を挙げてみただけです。

 ところで、「高齢者特有の転びやすさ」について、皆さんは答えられますか?

 …「高齢者は加齢とともに運動能力や筋力が低下し、転びやすくなります」、その通りです。その通りですが、何か物足りないですね。もう少し肉付けしてみます。

「さらに、高齢者では骨が弱くなっていることが多いので、転倒すると容易に背骨の圧迫骨折や、股関節付近の骨折(大腿骨頚部骨折:だいたいこつけいぶこっせつ)を伴いやすい。これらの骨折はさらなる移動能力の低下をもたらし、その後の健康的な生活を損なう原因となります」、正解です。この成れの果てを「フレイル」と言います。

 ここで重要な言葉を思い出していただきたい。「ロコモティブシンドローム」

新しい言葉です。平成19年に日本整形外科学会から提唱されました。日本語で、運動器症候群。これは、運動器(身体運動に関わる骨、関節、筋肉、神経などの総称)の障害により移動機能の低下した状態、すなわち転倒を起こしやすい状態を総称するものです。

高齢者が転びやすい要因はロコモティブシンドロームだけではありません。脳卒中後遺症の人(麻痺や半盲)、パーキンソン病(症候群)の人、認知症の人、脊髄障害のある人など、疾患特有の要因を持つ人も多くおられます。

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