17. ほんとうは怖い約束処方の話…など

①「血圧が○○以上だったら臨時の薬を飲ませてね」「はい、わかりました、ありがとうございます」…うん、いい返事だな、ちゃんと挨拶もできるし。

 「お疲れ様です、昨日の△△さんの血圧はどうでした?」「はい、昨日は問題ありませんでした。今朝血圧を測ったら○○以上でしたので指示のあった薬を飲んでもらいました。そのあと、普通に食事をしたので、食後の薬を飲んでもらいました」

 ちょっと待て!朝の薬にも降圧剤が入っているだろ?(案の定、△△さんの血圧は80台まで下がってしまいました。)

こんな時はどうしますか?

 ・まず、看護師に相談する…順当な答えです。

 ・臨時の指示薬を飲ませてしまったので、朝の薬をどうするか、看護師に相談する…これも正解だな。

 ・朝の薬に血圧の薬が入っているからあと2時間このままにしよう、

 ・前指示があって約束処方もあるんだから言われたとおりにしよう、朝の薬は2時間後だから関係ない、

 ・朝の薬の中から血圧の薬を抜いて今飲ませよう、

 ・今は約束処方を使って、その代わり朝の血圧の薬は休もう、

後半の4つの対応はどれも間違っています。どこが悪いかというと、ドクターがそもそも悪い。こういう状況を予測しないで簡単に約束処方を出した。おそらくドクターは、わからない時は看護師やケアスタッフから電話が来るだろうと高(たか)を括(くく)っていたと思います。でも、たとえドクターの判断が甘かったとしても、自己判断で処理してはいけないと思います。なぜなら、指示を出したのはドクターです、ドクターがどんな考えをしてその指示を出したのか、あなたはまだ知らないのですから。ここは素直にドクターの判断を聴くべきであり、ドクターはその時はじめて自分の指示が甘かったことと良いスタッフがいてくれたことに感謝するはずです。

 ②足のむくみ予防及び改善のため、椅子に座っている時に踵を上げ下げする運動をしたらいいと言われたので、食事のときに足の運動をしてもらってます。

(まさか、こんな純?なスタッフはいないでしょう。これって、たとえ話でしょ?)

 これに対するコメントはありません。

 ③高熱が続いたら電話くださいってドクターに言われたけど、何日高熱が続いたら連絡するの?

  それは失礼しました。その見解はドクターによるでしょうし、発熱を起こす疾患にもよるかもしれませんが、Drヒマダーの見解は、介護スタッフを不安と恐怖に陥れないためを考えたら、高熱でドクターに連絡をするタイミングは、「何日目」ではありません!

・解熱剤を使ったのに下がらない時、

・解熱剤を指定された時間ごとに使っているけど、このままだと夜間にドクターを起こすことになりそうだと感じた時、

・初日は解熱剤で一晩過ごしたが、次の日になったらまた上昇し、栄養と水分の不足が予想されるとき、

・高熱以外の症状があり、病態が悪化していると感じた時、

などです。

 重要なことは、皆さんに見て(観察)いただいているということはドクター自身は診て(診察)いないと言うことです。そうであれば、皆さんからの情報をもとにリモートで診察しなければなりません。残念ながらDrヒマダーは名医ではありません。常に気にかけていますから、些細なことでも情報を発信していただきたい。高熱を2日も3日も放置しておいてはいけません。 

入れ歯は熱湯で消毒してもいいですか?

 これは、歯科医のドクターの強い警告があります。

 「入れ歯の床はプラスティック製なので、60度以上のお湯につけると変形してしまいます。 「消毒」する目的で、熱いお湯に浸けてはいけません。 また、強い酸やアルカリ性の薬液につけると、(入れ歯の)床の材質の劣化を早めるだけでなく、金属の部分も錆びたりしてしまいます。」

 他にもたくさん答えてくださっていますよ。ご紹介しておきます。とても参考になりますよ。(入れ歯洗浄剤 Q&A 横浜・中川駅前歯科クリニック)

Q.水洗いだけで十分な気がするのですが、入れ歯洗浄剤を使ったほうがよいでしょうか?

A.入れ歯のプラスチック面は細菌が繁殖しやすく、入れ歯洗浄剤を使用しないと虫歯、歯周病、口臭、口腔カンジダ症、肺炎などの原因なることがあります。

Q.入れ歯洗浄剤を使用すれば、ブラシで入れ歯を洗わなくても大丈夫ですか?

A.入れ歯洗浄剤では大きな汚れは除去できないため洗浄剤の使用前にブラシで洗う必要があります。

Q.毎日、入れ歯洗浄剤を使用したほうがよいでしょうか?

A.入れ歯を清潔に使用するためにも、毎日使用したほうがよいでしょう。

Q.歯みがき粉で入れ歯を洗っても大丈夫でしょうか?

A.歯みがき粉の中には研磨剤が含まれているため、入れ歯が傷ついてしまいます。入れ歯洗浄剤(ブラッシング用)を使用されるのがよいでしょう。

Q.総入れ歯用の洗浄剤を、部分入れ歯に使用しても問題ないでしょうか?

A.総入れ歯用の洗浄剤を使用すると、金属バネが黒色に変色することがあるため使用しないほうがよいでしょう。

Q.合わない入れ歯洗浄剤を使用したら金属バネが変色しました。変色したバネの色は元に戻りますか?

A.歯科医院で洗浄してもらったり、みがいてもらうと元の色に戻ります。

Q.イソジンでの消毒は、入れ歯洗浄剤と同様の効果が得られますか?

A.得られません。イソジンには金属を腐食させる作用があるため、特に部分入れ歯は使用しないほうがよいでしょう。

Q.妊娠中ですが、入れ歯の洗浄剤を使用しても大丈夫でしょうか?

A.使用後に水で洗えば問題はありません。

Q.認知症の母親が入れ歯洗浄剤を飲み込んでしまいました。どのように対応すればよいでしょうか?

A.入れ歯洗浄剤を誤飲しても、ほとんどの場合は問題ありません。充分にうがいをおこない、水や牛乳(120~240ml)を飲んで様子をみます。大量に飲み込んだ場合は、胃の洗浄をおこなったり、胃粘膜保護剤を服用します。

血圧が測れません。脈もわかりません。ナースがつかまりません。

 えーっ!すぐに行きます!

 血圧エラー…これ、電池交換のマーク見えるでしょ?

 脈、わからない…脈ってどこでわかるの?ここだよ、ここ。

 ○○さんに異常がなくてよかったね、だってこの人今何か起こるなんて予想もしてなかったからね、びっくりしたよ。二つも不安なこと重なるとパニクるよね、今度から落ち着いて連絡してね。

SpO2が68です。返事をするから大丈夫だと思うんですけど…ナースがつかまりません。

いや、大丈夫じゃないよ。どんな呼吸をしているか、血圧はいくらか、体温はどのくらいか、ほかに異常があったら教えて。

⑦入浴のための安全な血圧について聞いたけど、入浴前に多少血圧が高くても、入浴後は一般的に血圧は下がるっていう話だから、大丈夫じゃない?

 確かに入浴後は血圧が下がるでしょうね。入浴後に血圧が下がる理由は二つ考えられます。

一つは、血管が拡張するので血圧が下がる、

もう一つは、血圧の上昇による異常(脳出血や心筋梗塞)が起こって重篤な状態に至った場合。

血管が拡張して血圧が下がるのは、あくまでも入浴「後」であって、入浴の際には血圧は上昇するはずです。

だから、理屈はそうであっても、おすすめはしません。ドクターがお勧めしないことを敢えてやる必要がありますか?

錠剤をのみやすくするいい方法見つけました、とろみ剤を使ってゼリー状にするとつるんと飲ませられるんですよ、おススメ!

 う~ん、創意工夫は認めます。これからも頑張ってください。ですが、申し訳ない!

それはあまりお勧めできません。とろみ剤のところでは触れなかったのですが、実は前から、「とろみ剤の消化管(胃や腸)内でのメカニズムはどうなっているのだろう」というのが、Drヒマダーの「答えの見つからない」疑問でした。しかも、今回、こんな資料を見つけました。岩手医科大学関係者のものと思われます。

スポット薬学講座 No. 10 臨床薬学講座臨床薬剤学分野

とろみ調製用食品の功罪

〜とろみ調製用食品を使ったお薬の服用には要注意〜

臨床薬学講座臨床薬剤学分野 教授 工藤 賢三

とろみ調整用食品(とろみ剤)をご存じですか?とろみ剤は、食べ物や飲み物に加えて混ぜることにより、適度なとろみを手軽に付けることができ、飲食物などを飲み込みしやすくする食品のことです。加齢や疾患などが原因で、飲食物を飲み込む力が弱くなったり、飲み込む神経の働きが悪くなったりすると、飲食物を摂取する際に上手に飲み込めずに、むせることや誤嚥を起こすことがあります。特に、高齢者の場合、誤嚥性肺炎を起こしても自覚症状がわかりづらく発見が遅れ、結果として重症化する割合の多いことが知られています。医療や介護の現場では、この怖い誤嚥を防ぐために、食事の姿勢に気を付けたり、調理の工夫や飲食物にとろみを付けて飲み込みを助けるための工夫を行っています。とろみ剤は、飲食物に加えることで簡単にとろみが付けられるため食事の際に利用されています。

食事をした後には、お薬を服用することも多いと思います。本来、お薬は水かぬるま湯で服用することになっていますが、嚥下の問題から、とろみを付けた水に混ぜてお薬を服用している場合もあるようです。最近、このとろみ剤を使用して錠剤を服用した患者の便中に未崩壊の錠剤が観察されたことが報告され、とろみ剤が錠剤の崩壊に影響することが示唆されました。崩壊とは、錠剤などの内用固形製剤を経口投与したときに、消化管内において製剤に水(液体)が浸入し、形が崩れることをいいます。その後、崩壊した製剤が多数の小さな粒子になる分散やその粒子から薬が溶け出る溶出の過程を経て薬が体内に吸収されていきます。崩壊は、内用固形製剤の効果を発揮するための大切な最初のステップになります。

当講座では、富田隆准教授を中心として、介護施設等でのとろみ剤の使用実態や内用固形製剤へのとろみ剤の影響の薬剤学的、薬物動態学的な研究を行っております。その結果、とろみ剤は速崩壊性錠剤の崩壊に影響すること、実際に速崩壊性錠剤からの薬の溶出やその効果に影響することが徐々に明らかとなってきました。現在、岩手大学農学部や企業との共同により崩壊抑制機序の解明を行うと共に、お薬の服用にも安心して使用できるとろみ剤の開発を目指して研究を行っているところです。

皆さんの周りで、とろみ剤を使ってお薬の内服をしている方がおられれば注意をして頂けると有り難く存じます。また、ご質問等があれば、当講座に遠慮なくお問い合わせ下さい。

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