19. 歯磨きができているから、口腔ケアは要らないでしょ?

 そもそも歯磨き(入れ歯を含む)は口腔ケアの一つです。あなたの質問は、「歯磨きが自分でできるんだから、わざわざ、スタッフが口の中を確認したり歯科の訪問をお願いする必要はないでしょ」という意味ですね。  

「口腔ケア」は、歯磨きのみならず、口腔内(歯や歯肉、舌、粘膜などのお口の中の領域全て)の清掃や、機能低下を予防・改善するための訓練やリハビリテーションを含めて使われる言葉です。

口腔機能の改善が進むと、摂食・呼吸といった基本的な生命機能保持、健全な食生活の確保、コミュニケーションや社会生活の回復と拡大が図られ、心身ともに健康的な生活を実現することにつながります。また、口腔機能や口腔内の清潔が保持されることにより、誤嚥性肺炎が予防され、それによる生命の損失を避けることにもつながります。

ひと言でいうと、口腔ケアは、「楽しく」「おいしく」「安全に」食事ができる環境を整えることにより、QOL の向上や生きがいのある生活の実現を目指す取り組みです。読んでいてもちっとも楽しくならないけど、実践するとその先に楽しんでくれる姿を享受できる、魔法のケアです。

魔法をかけるにはある程度の修業が必要です。

皆さんに必要な修行は、「器質的口腔ケア」と呼ばれるものです。平たく言えば先ほど

の「歯磨き」です。ハハハって笑わないでください。ただブラシで歯や入れ歯を磨くだけでは魔法は習得できません。お口の中をよ~く観察する、この「観察眼」の習得が修行です。

 ・くちびるが乾いてひび割れしていませんか?

 ・食べカスが残っていませんか?

 ・口内炎はできていませんか?

 ・白い苔のような汚れ(舌苔)はついていませんか?

 ・歯ぐきが赤くはれていませんか?

 ・歯石はついていませんか?(義歯にも歯石は付きます)

 ・むし歯はありませんか?

 ・歯が折れたり欠けていませんか?

 ・歯ぐきや歯から血や膿がでていませんか?

 ・口臭はありませんか?

 さて、これらの「観察眼」をマスターして始める「器質的口腔ケア(歯磨きですけど)」、さすが「魔法使い」という気がしませんか?単なる歯磨きから、その方のお口の中の異常までチェックしている自分、すごいでしょ?じゃ、異常が見つかったらどうします。改善してもらわなきゃ、あなたとしては許せませんよね。そこで登場するのが、歯科医や歯科衛生士と言われる専門職による魔法「機能的口腔ケア」または「専門的口腔ケア」です。

 口腔ケアの実際の動画は、みんなの介護ちゃんねる(口腔ケア編、 https://www.minnanokaigo.com/channel/oral-care/)を参考にしてください。

 なぜ、ここでは「魔法」なんて言葉を使ったか?そうですね、魔法は一変して夢を与えてくれますが、いつか魔法の効力は切れてしまいます。口腔ケアもしっかりやれば、その方の人生を一変させ、「楽しく」「おいしく」「安全に」食事ができ、QOL の向上や生きがいのある生活を実現できますが、口腔ケアは続けないとすぐに効力を失ってしまいます。医療者には真似のできない、まさに魔法使いの仕業です。

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