脳卒中は減ったのか? (3)くも膜下出血は減ったのか?

前回、「脳出血の発症率が減って死亡する人も減ったので、脳血管疾患死亡率は減った、」と述べました。
では、くも膜下出血はどうなのでしょうか?
くも膜下出血は残念ながら、減っていません。近年の目覚しい女性の社会進出とあいまって、女性のくも膜下出血例が少しずつ増えている傾向が見られます。
そのせいで近い将来、脳血管疾患死亡率がまた第2位に浮上する、というわけではありませんが、くも膜下出血後の予後不良例(寝たきりになったり死亡する例)は4割にもなるというから、大問題です。
それでは、くも膜下出血の予防にはどんなことが良いのでしょうか?
喫煙習慣をやめる、高血圧を是正する、過度の飲酒をやめる、・・・ちょっとさびしいですが、こんなところです。
面白いのは、やせた高血圧の人、やせた喫煙者ではくも膜下出血の危険が大きいとのデータが挙がってきたため、「やせすぎは危険!」と健康番組で強調して取り上げられたことでしょうか。
くも膜下出血後の治療の最重要目的は、再出血予防です。出血直後の再出血の危険度が非常に高く、この時間帯(多くは24時間以内)は安静治療が優先されます。そのあと、重症度にあわせて早期手術か、状態が安定するのを待って行う待機手術かが検討されます。
また、近年最先端治療ともてはやされている血管内手術を行うか、それとも開頭手術を行うかについては、どちらが良いとは現段階では申し上げにくいところがあります。ちなみに、欧米での、治療1年後の障害を残さなかった生存率比較では、明らかに血管内手術に軍配が上がっているようですが、これは技術的な問題や人種間の脳動脈変化の違いなどを考慮しないと日本でも当てはまるとはいえません。それよりも、早期安静、早期治療、が予後を左右する最重要項目ですから、「いつもと違う頭痛」と思ったらためらうことなく脳外科で検査を受けることが大切です。しばらく様子を見て・・・というのが最悪の結果をもたらすのです。
くも膜下出血後4日を経てから市内の3箇所の脳外科を回ったけれどどこでも異常なしといわれ、2週間後に再出血を起こして後遺症を残した症例も現実に存在するのです。
(つづきはまた・・・)