記憶障害(認知症シリーズ -2-)

今日は中核症状の中の記憶障害について、お話したいと思います。
記憶障害は、認知症に必ず見られる・・・と、言って良い症状です。
人間には、目や耳から得た沢山の情報から関心あるものを一時的に捕らえておく機関(海馬)と、重要な情報を頭の中に長期に保存する「記憶の壷」が脳の中にあると考えて下さい。
私達は、いったん「記憶の壷」に入れれば、普段は思い出さなくても、必要な時に必要な情報を取り出す事ができます。
しかし、年を取ると一度に沢山の情報を捕まえておく事ができなくなり、捕まえても「記憶の壷」に移すのに手間取るようになり、更に「記憶の壷」から必要な情報を探し出す事も、時々失敗します。年を取って物覚えが悪くなったり、ど忘れが増えるのはこのためです。
それでも、大事な情報は「記憶の壷」に収まります。
ところが、認知症になると、脳が病的に衰えてしまうため、情報を「記憶の壷」に収めることができなくなり、新しい事を記憶できずに、先ほど聞いたことさえ思い出せないのです。病気が進行すれば「記憶の壷」が溶け、覚えていた記憶も失われて行きます。
例えば、物取られ妄想ですが(妄想は後にお話したいと思いますが・・・)私達は、大事なものをしまい込んでも、どこかにしまった事は覚えていて、探すことができますが、認知症になると、しまったことを覚えていないのです。大事な物が忽然と消えたのですから、大変です!盗まれたとしか考えられないでしょう?
志村けん、の「・・・さん、めしはまだかい?」あれも記憶障害が関係あります。
私達は昨日の夕食に何を食べたか忘れる事がありますが、食べた事は覚えています。
でも、認知症の方は食べたことを覚えていない為、「嫁がご飯を食べさせてくれない」となるのです。
「私は忘れてなんかいない!」という主張は、私が認知症だなんて!!というやり場の無い怒りや悲しみ、不安から自分の心を守るための自衛反応です。認知症の人の隠された悲しみの表現だと思います。