実行機能障害(認知症シリーズ -4-)

今回は中核症状の最後の項目の実行機能障害です。
健康な人は頭の中で計画を立て予想外の変化にも適切に按配してスムーズに進めることができます。認知症になるとそれが上手く出来なくなり、日常生活を円滑に行うことが困難になります。
例えば、スーパーでニラを見て冷蔵庫にあった卵と一緒に卵とじを作ろうと考えたと仮定します。
認知症になると冷蔵庫の卵のことはすっかり忘れて、ニラと卵を買ってしまいます。ところが、夕食の準備にかかると、買ってきたニラも卵も頭から消えて、目に付いた材料で料理をしてしまいます。冷蔵庫には同じ食材が並びます。
認知症のひとにとってご飯を炊き、同時進行でおかずを作るのは至難の業です。
でも「何も出来ない」のではありません。献立を考え、料理を平行して進めることはできませんが、全体に目を配りつつ一つ一つの声がけで食事の準備をすることができます。
こうした援助は根気もいるし、疲れますが認知症のひとには必要な支援です。
少しの手助けで、ご自分で出来ることが沢山あるのです。
感情表現の変化
私達は自分が育ってきた文化や環境、周囲の個性を学習し、記憶しているため、通常、自分の感情を表現した場合の周囲のリアクションは想像つきます。さらに、相手が知っている人であれば、かなり確実に予測できます。
認知症の人は時として、周囲の人が予測しない、思いがけない感情の反応を示します。それは、今までにお話した、中核症状である「記憶障害、見当識障害、理解・判断力の障害」のため、周囲からの刺激や感情に対して正しい解釈ができなくなっているのです。
例えば普段の会話の中で「そんな馬鹿な」という言葉で、その場の状況を読めずに認知症のひとは「馬鹿」と言われたと解釈し、ストレートに怒りの感情をぶつけてしまうのです。
でも、認知症の人の行動が解っていれば、少なくても、本人にとっては不自然な感情表現ではないことが理解できますね。