わかりやすい頭痛の話 はじめに

私たちはさまざまな場面で頭痛を体験します。
たとえば、
1.目を使うと頭痛がする
2.コンピュータ作業をすると頭痛がする
3.冷たいものを食べたら、つーんと頭痛がする
4.空腹になると頭痛がする
5.プールで潜水をしたらひどい頭痛が起こった
6.生理の前後に頭痛がする
7.咳をすると頭にひびきます
8.運動(ランニング、水泳、テニスなど)をしたあと、頭痛に襲われる
9.セックスの時に頭痛がする
10.飛行機で着陸時に猛烈な頭痛が起こる
11.高山で頭痛がする
12.締め切った部屋で同室者がいっせいにがんがんとする頭痛が始まった
13.新築のうちに入るとカゼを引いたような感じになる
14.鎮痛薬をほぼ毎日3ヵ月飲み続けていたら、むしろ頭痛がひどくなった。
15.起き上がると頭ががんがんと痛み、臥床すると頭痛は消える。
時にはこんな頭痛を経験することもあります。
16.今朝8時20分に急に頭痛が始まった。
17.ガーンとくる衝撃感や気が遠くなるような感じが突然起こって、それから何となく頭痛が続いている。
18.突然バットか何かで殴られたように頭が痛くなった。
19.ギラギラした光が見える頭痛。
20.2、3か月前から気になっていたが、だんだん頭痛がひどくなってきた。
21.高熱と嘔吐を伴う頭痛。
22.いつもと違う頭痛がする。

頭痛には日常よく見られる「たちの良い頭痛」と、放置すると生命にもかかわりかねない「たちの悪い頭痛」があります。上に掲げた1から15は主に「たちの良い頭痛」として、16から22は「たちの悪い頭痛」として挙げたものですが、一見たちのよさそうな頭痛の中にもたちの悪い頭痛が紛れており、反対に「この頭痛はきっと悪い頭痛だろう」と思って診てもらった頭痛が「良性」と言われ気が抜けてしまうこともないわけではありません。
ですから、これからお話しすることはあくまでも参考として受け止め、少しでも疑問を感じたり不安に襲われる頭痛を体験した場合はすぐに医師に診ていただくことをお勧めします。

頭痛はつぎの6つの機序が単独に、または複合して、出現します。
1.血管から起こる頭痛(血管性頭痛。代表的な血管性頭痛は片頭痛) 。
2.精神・筋の緊張から起こる頭痛(緊張型頭痛) 。
3.頭蓋内の疾患からの頭痛(牽引性頭痛、炎症性頭痛)。
4.神経痛(頭にも神経痛があります)。
5.関連痛(耳鼻眼歯の疾患)。
6.心因性(抑うつ性頭痛、身体表現性障害、妄想による頭痛など)。

1.血管からおこる頭痛
頭の血管が拡張して周りが腫脹(炎症)を起こすと、血管周囲の神経が刺激されて頭痛がおこります。
このタイプの頭痛の代表は 片頭痛と群発頭痛です。
つまり、よく耳にする「片頭痛」は頭の血管が脹れて痛む頭痛です。(血管が収縮した時に起こる頭痛はないということになっています。)頭の片側が痛むことが多いのですが、両側が痛むことも少なくありません。しばしば吐き気も伴ないます。ズキンズキン・ガンガンする頭痛ですね。

2.筋肉や精神の緊張からおこる頭痛
頭や首のまわりの筋肉のコリや精神の緊張から起こる頭痛で「緊張型頭痛」といいます。
頭が締め付けられるような、重苦しいタイプの頭痛です。
「頭重(ずおも)」とか「頭重感」といわれているのは このタイプの頭痛です。

3.脳の病気から起こる頭痛
脳腫瘍、くも膜下出血、髄膜炎などが原因となる頭痛です。
「いつもと違う頭痛」の場合にはこの「脳の病気から起こる頭痛」を疑う必要があります。

ここで、はじめにお話しした、「たちの良い頭痛」と「たちの悪い頭痛」について整理しておきます。

1.一次性頭痛(=機能性頭痛)(基礎疾患のないもの)・・・これが「たちの良い頭痛」です。
片頭痛、
緊張型頭痛、
群発頭痛、
その他の一次性頭痛

2.二次性頭痛(=症候性頭痛)(原因疾患のあるもの)・・・これが「たちの悪い頭痛」です。
脳外科的適応のあるもの
(例:くも膜下出血=炎症性頭痛、脳腫瘍=牽引性頭痛)
内科的なもの
(例:髄膜炎=炎症性頭痛、感冒=二次性血管性頭痛)
耳鼻眼歯科疾患によるもの=関連性頭痛

これらと区別して、
3.神経痛と顔面痛

というのが分類されています。
一次性頭痛は片頭痛か緊張型頭痛がその大半を占めており、慢性・反復性にくるのでご本人も「いつもの頭痛」と割り切っていることが多いです。
一方、二次性頭痛(器質性頭痛)はなんらかの基礎疾患を持つ頭痛です。
「ふだん経験したことのない頭痛」ということで、病院を受診します。その結果、カルテの病名欄にはその原因疾患名が入ることになります。
二次性頭痛のなかで、もっとも重大なのはくも膜下出血の頭痛です。

つまり、「専門科に送るべき二次性頭痛」を的確に把握することが大切です。

あなたの頭痛は、
外科的頭痛か内科的頭痛か (前者の例はくも膜下出血、後者の例は片頭痛)。
悪性頭痛か良性頭痛か (前者は命に差し支える頭痛、たとえば髄膜炎、後者は緊張型頭痛)。
急性頭痛か慢性頭痛か (前者はくも膜下出血、後者は片頭痛)。
ここがポイントです。

これら各頭痛についての詳細は、頭痛の各論でお話しすることにして、そのまえに「危険な頭痛の兆候」についてお話ししておこうと思います。