わかりやすい頭痛の話 危険な頭痛

脳外科の外来にいますと、「強い頭痛、長い頭痛」で頭の病気が心配といって受診されるケースをよく見かけます。
しかし、「長い頭痛」といわれた医師は大抵はそれだけでほっとします。「強い頭痛」の場合も、「いつもなんです」と言われるとそれだけで内心は穏やかになります。どちらも、危険度が極端に少なくなるからです。
言い換えると、頭痛という痛みは、脳や体のどこかに病気がないかを知らせる警報機なのです。
では、どんな頭痛が脳や体の危険を知らせるサインなのでしょうか?
ひと言で言えば、「いつもと違う頭痛」です。
それには、
いままでに経験したことがない頭痛
「ふだんと違う」頭痛
いままでで最悪の頭痛
激烈な頭痛
突発する頭痛
発熱、発疹を伴う頭痛
未明・早朝からの頭痛
嘔吐を伴う頭痛
進行性、徐々に悪化あるいは持続的な頭痛
神経症状(麻痺、複視)を伴う頭痛
精神症状を伴う頭痛
てんかんを伴う頭痛
項部硬直のある頭痛
高齢者の初発頭痛
病感が強い(患者が憔悴している)
(眼科で)うっ血乳頭を指摘された頭痛
などがあげられます。
たとえば、発熱や発疹を伴う頭痛は髄膜炎や脳炎などの脳の感染症を疑いますこの場合は嘔吐を伴うことも特徴的です。
早朝・未明から起こる頭痛の多くは、片頭痛や群発頭痛といわれる良性の頭痛ですが、脳腫瘍、高血圧、蓄膿症、睡眠時無呼吸症候群などでも朝から頭痛が始まるので注意が必要です。
嘔吐を伴う頭痛は、片頭痛でもみられますが、髄膜炎、脳炎、脳腫瘍でもよくみられます。
いままでに経験したことがない頭痛、「ふだんと違う」頭痛、いままでで最悪の頭痛 、激烈な頭痛、突発する頭痛などで表現される頭痛の代表的な病気はくも膜下出血です。
今説明したように、危険な頭痛といいながら、その中には片頭痛や群発頭痛などの一次性頭痛でもみられる頭痛が含まれています。
つまり、激烈な頭痛や、吐いた、目が見えなくなる、などの頭痛があると、脳の病気があるのではないか、と本当に心配になります。
たしかに、このような頭痛は、脳の病気の心配をしなければならないのですが、かならず脳の病気があるかということではないのです。
片頭痛も吐き気や嘔吐をともないますし、目が見えなくなる前兆をともなうこともあります。
一次性頭痛で最強の頭痛といえば群発頭痛です。
また、後頭神経痛も発作的に後頭部痛が起こり、頭の病気を心配して受診されます。
運動をしているときに激しい頭痛が起こるとくも膜下出血を疑わなければなりませんが、「労作性頭痛」といって、無害なものもあります。労作性頭痛は休んでいると治まります。
咳やくしゃみ、息張ったときの頭痛は、咳頭痛といいます。なあんだ、両性なんだなと思われる呼び名ですが、実は咳頭痛は脳の病気と関係ない良性の場合と、頭の中から頭痛が起こっている場合があるので要注意です。
前述したように、突然の頭痛はくも膜下出血の特徴ですが、すべてがくも膜下出血かというと、必ずしもそうでもなく、無害なものもあるのです。
なかなか難しいものですね、頭痛は。「たかが頭痛、されど頭痛」で、たかが頭痛が一次性頭痛であり、されど頭痛が二次性頭痛だとお話される高名な先生もいらっしゃいます。このたとえをお借りすれば、たかが頭痛と思って放置していたらされど頭痛だったということにならないように、不安になったら一度は医師の診察を受けてみるべきです。反対に、されど頭痛だと思って受診したら、あっさり、たかが頭痛の類だと言われたとしても・・・それはそれで幸せな勘違いかと思うのです。


上記のような危険な頭痛ではないのですが、医者にかかったほうが良いと思われる頭痛を挙げておきます。
頭痛で生活がおびやかされる場合
月10回以上、鎮痛薬を飲んでしまう場合
連日のように頭痛が起こる場合
頭痛が頻繁で、なんとか頭痛の頻度を減らしたい場合
ひどい頭痛で、市販薬も効かず、手におえない場合
吐き気や嘔吐で薬が飲めない場合
嘔吐や下痢で脱水症になってしまった場合
頭痛の正確な診断を知りたい場合
頭痛の原因や余病を知りたい場合
頭痛の本格的治療を望む場合
薬の飲み過ぎによる薬物乱用頭痛から脱却したい場合
などです。
皆さんの頭の中をかき回してしまって申し訳ありません。
この書は頭痛について基礎知識を持っていただくことを目的としています。
自分の頭痛がどんなタイプの頭痛なのかは一度医師の診断を受けてみないとわかりません。
普段の頭痛がどのタイプなのか、安心してよいものなのか、特別な治療は必要ないのか、一度は診察や検査を受けましょう。
そして「普段と違う頭痛」を感じたらすぐに病院にいきましょう。